春を待つ橋の下
学生時代、卒業設計の全国大会で金賞を貰った作品です。
人間の背骨のような「橋」が曲がりくねって人の居場所をつくる、公園のような地域施設+宿を提案しました。貧しい人は自ら人間関係を絶っていって孤独になり、さらに貧困を深めてしまうことが多く、この川辺に計画された居場所が彼らのセーフティーネットとなるように祈りながらつくりました。ところどころ三角形になっている橋は屋根を表していて、橋は貧しい人の屋根であり、すべての人が必要としているものです。
敷地は関東の貧民街、山谷の泪橋から流れ着いた川が隅田川に合流する場所、言問橋付近の隅田公園としました。ここはホームレスの炊き出し場になったり、日中おじさんたちがぶらぶらしたり寝っ転がったりできる場所でしたが、ちょうど私がこの製作をしていたときに工事の手が入り、彼らは追い出されてしまいました。
行くところが無い人を、追い出して、追い出した末に彼らはどこに行けばいいのでしょうか?もし明日、戦争になったり、暴力をふるわれたり、騙されたり、事故にあったり、何か不幸なことがあって自分の家を去らなければいけなくなって、社会にも冷たく追い立てられたらどんなに悲しいでしょう。家をなくしてしまった人がもう一度、安心できるくらしをするために、私が建築家として、社会に建築の言葉を投げかけたはじめての作品でした。