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心をすくう優しい場所をつくる
私はこれまで衰退する集落やドヤ街の研究を行ってきました。過疎地域の喫茶店で暖かく私をもてなしてくれた店主と犬。ごちそうさまでした、と会計を済ませて店を出た後振り返ると、がっくりとうなだれる店主に犬が寄り添って座っている風景がありました。このような地域に、他の地域の人々が足を運ぶきっかけを建物などを通してつくっていきたいです。
実家を手放す際は「おうちさよなら会」という建築のお葬式を催しました。父が設計した家を手放すのはとても悲しかったです。愛する母を亡くし、家も手放すことになり、父も私も落ち込んでいました。引っ越しの直前に父が大事にしていた庭木で、次の生活の場に希望の光をもたらす草木染のカーテンを大勢で制作する会を開き、にぎやかに家での生活に幕を下ろしました。
空家を内覧させてくださった大家さん。一カ月に一度この空家に風を通しつづけてきたとのことで、売り買いや貸し借りの条件をお聞きした時にはとても悲しそうにしていらっしゃいました。できることなら土地や建物から離れる方が、戻って来られるような場所づくりをしてあげたい。そういう考えが広がれば、場所同士の関係や人同士の関係も豊かになり、小さな歴史と人の縁が積み重なった街や集落ができるのではないでしょうか。
このような具体的なことを起点にして、ゆっくりと場所が醸成されることを目指し、日々こつこつと建築設計やイベントの企画などに取り組んでいます。